私が所属するドイツの地域協会では年に(各シーズンに)一度、審判資格更新講習会(LP: Leistungsprüfung auf Verbandsebene)が行われます。
地域協会に所属する 5部-7部担当審判員は、この更新講習会で行われるフィットネステストと競技規則テストに合格しないと次のシーズンの割り当てを受けることが出来ません。
先日、更新講習会を受講しましたのでその様子をお伝えしたいと思います(無事更新いたしました)。
更新講習会の開催時期と場所
まず更新講習会の開催時期ですが、毎年3月から5月(シーズンの後半から終盤)にかけて地域内の各地で行われます。地域内の各地とは、例えて言いますと、地域協会所属の 2級審判員は、地域の各都道府県で行われるどの更新講習会にも参加可能ということになります。各審判員は、各自の予定に合わせてどの日程の更新講習会に参加するかを決めますが、やはり住んでいる場所から一番近い所で行われる更新講習会へ参加する審判員が多数です。
更新講習会の内容
半日の更新講習会と一泊二日の更新講習会があります。更新講習会のおおまかな流れは以下の通りです。
半日の更新講習会
- フィットネステスト
- 競技規則テスト
- 審判委員会からの諸連絡
一泊二日の更新講習会
- フィットネステスト
- 競技規則テスト
- 審判委員会からの諸連絡(半日コースに比べてより詳細)
- 講義、ディスカッション(「審判委員会からの諸連絡」にかかる時間により、テーマ 2つか 3つ)
一泊二日の更新講習会では、半日の更新講習会に加え、講義、ディスカッションがあります。審判仲間と近況や講義、ディスカッションのテーマ以外にも様々なテーマについてゆっくりと話すことができますし、普段一緒に試合を担当することが少ない審判仲間と会うことができる機会でもあります。
何回か行われる更新講習会の最後の日程が一泊二日の更新講習会です。私はここ2年、住んでいる場所から近い場所ではないものの、この一泊二日の更新講習会に参加しています。
フィットネステスト、競技規則テスト、いずれかでも不合格になると次回の更新講習会にて追試験(NP: Nachprüfung)を受けることになりますが、今回の更新講習会は「一番最後の日程」。更新講習会の初めにも審判委員会より改めて「今後追試験を受けるチャンスがない、予定通り一発で合格するように」と説明がありました。
開催通知
一週間ほど前になると、開催通知と参加者リストが Eメールで届きます。既に参加希望日時を提出しているのでこの Eメールは一種のリマインダーでもあり、また参加者リストを見て近くの審判仲間と一緒に講習会会場へ行く調整をします。
今回の参加者数は約30人にフィットネステストの追試験を受ける約 10人をあわせて合計約 40人。
以下、開催通知に記載されているプログラムに沿って説明いたします。
プログラム(二日間コース)
初日(土曜日)
09:45 までに
フィットネステスト会場へ到着し、ウォーミングアップがすぐにできるよう着替えた状態で陸上トラックに集合
なお、その後の競技規則テスト、講義、ディスカッション会場とは別の会場です。
10:00-
スタンドに集合。開始の挨拶と参加者の確認
10:15-
グループに分かれてウォーミングアップ
グループは、赤のビブスと青のビブスの2グループ。
フィットネステストは5部リーグ所属のチームのホームグランドを借りて行われました。そのチームのフィジカルコーチの指示に従い、赤ビブス組が先にウォーミングアップを開始。自分自身でウォーミングアップをしたい人は各自ウォーミングアップ。
10:35-
フィットネステスト
スプリント(40m)
6本
合格基準
- 5部担当の審判員: それぞれのスプリント走で 6.2秒以下
- 6部/7部担当の審判員: それぞれのスプリント走で 6.5秒以下
なお、スプリント走間のリカバリータイムは計られていません。順番が回ってきたら走る、ということで今回の場合は、約2分程でした。
続いて
インターバル走(150m/50m)
35秒/40秒、すなわち 1インターバルにつき 150mを35秒で走り 50mを40秒で歩く。
合格基準
- 5部担当の審判員: 10周(20インターバル)以上
- 6部担当の審判員: 9周(18インターバル)以上
- 7部担当の審判員: 8周(16インターバル)以上
75m/25m のインターバル走は、私の所属する地域協会ではまだ採用されていません。
12:30頃までに
スポーツシューレ・ヘネフ(Sportschule Hennef)へ移動、各自チェックイン、必要であればシャワーを浴びること。
更新講習の会場まで一緒に来た審判仲間と相部屋でチェックイン。
※スポーツシューレ・ヘネフについての詳細は別の記事にて書きました。
13:00
昼食
13:45
競技規則テスト
20問(1問あたり2点、40点満点)
合格基準
- 5部/6部担当の審判員: 36点以上
- 7部担当の審判員: 34点以上
記述式で、①懲戒罰、②再開の方法(間接フリーキックの場合は、再開場所も必ず記述する)と ③(回答が必要であれば)考慮に入れるべきこと、の3つを記入します。いずれかに誤りがある場合、1つにつき -1点で、2つ以上誤りがあった場合はその回答は 0点です。
厳格に試験時間何分と決められていませんが、大体20分くらいで終え、終えた人から休憩に入ります。まだ問題を解いている人が少なくなってくると、その人達の周りに審判委員会のメンバーがうろうろ歩きはじめます。多少プレッシャーを受けながら、30分程で全員が競技規則テストの回答を終えます。
※競技規則テストの詳細は別の記事にてお伝えしたいと思います。
14:30
審判委員会より諸連絡
競技規則テストの追試験が必要な人は、ここで追試験を受ける(と予定されていますが、この時点ではまだ採点が終わっていませんし、以降も追試験は行われません。やはり「一発で合格するように」ということ)。
2019年
審判委員会会長より
- 5つある4部(レギオナル・リーガ)から 3部(全国リーグ)への昇格、またその逆(3部から4部への降格)について。昨シーズンまでは 3チーム枠であったが、今シーズンより 4チーム枠となっている。これは今後 2シーズン、2019/2020 シーズンまでの暫定処置。
※詳細は「リーグとサッカー協会の構成 #4部から3部への昇格」を更新しました。
割当担当より
- 5部担当の審判員は皆、シーズンにつき 5回、6部担当は皆、シーズンにつき 4回アセスメントを受ける。シーズン後半になっても規定の回数アセスメントを受けていない審判員は審判委員会へ連絡をすること。
※7部は アセスメント回数は 3回のままなので、5部、6部のアセスメント回数を増やしたということ。
- 6週間のバケーションに行くことは構わないが、バケーション直後の割り当ては、フィットネス強度が普段担当しているリーグより求められないリーグの試合へ割り当てをし、徐々に普段担当しているリーグの割り当てへと戻していくよう割当担当者は意識をしている。
指導部より
- 実際に起きた競技規則の適用ミス(再開方法の誤り)などを、実名を明かさない形で公開。「普段は 5部を担当している審判員が、6部の試合で …」という説明の仕方。
- 審判報告書の記入について。退場の理由として「著しく不正なプレー」、「乱暴な行為」と記入するだけではなく、備考欄に事象の詳細を記述しなかった審判員がいた。
いろいろなパーソナリティーがありますが、この担当者は、君たちは地域協会割り当ての試合を任されている審判員なのだから、そういう競技規則の適用ミス、審判報告書の記入漏れなどはないようにしっかりしてくれよ!と発破をかける感じの話し方でした。
- 審判報告書に、交通費精算のための移動距離を記入する欄があるが、実際の距離よりも 50 km 程多く記入されたケースがあった。5 km程の差であれば誤差と言えるが、50 km も差がある場合は見逃せない。サッカーについて、例えば、チームから判定に対して質問があれば堂々と受けたいが、こういったサッカーの本題と関係のない所で時間を取られたくない。しっかり正しく記入してくれ!
アセスメント(アセッサーの割り当て、アセスメント・システム)担当より
- 今(2018/2019)シーズン、今のところアセスメントの平均点は、5部担当審判員が 8.36、6部担当審判員が 8.37、7部担当審判員が 8.33、今シーズンは各リーグともアセスメントをの平均点が 8.40 以上の審判員が今後追加のアセスメントを受ける。
- アセスメント・システムについては、後ほど(18:45より)講義、ディスカッションする。
昨年(2018年)は、「審判委員会からの諸連絡」は 16:00 に終了しました。審判委員会会長より、昇級した審判員のそれぞれの良さについてかなりの時間を使って説明があったこと、割当担当より、事情があって割り当てを受けられないのは理解できるが、できるだけ早くシステムに割り当てが受けられないと入力すること、等々、昨年の方が諸連絡は多かったです。
15:15
コーヒーブレイク
15:30
講義/ディスカッション1
ブンデスリーガ 2018/2019 第33節 テレビ観戦研修。意見が分かれるであろう判定の(あなたの)評価と解釈(メモを取ること!)。
「ブンデスリーガ 2018/2019 第33節 テレビ観戦研修」の詳細は別の記事にて書きました。
フィットネステストも競技規則テストも終わったからか、皆リラックスモードです。前半のキックオフの後も、おしゃべりをしている人が多く、とてもうるさかったです…。
ハーフタイム中
競技規則テストの復習(誤りが多かった問題) Fehlerbesprechung
競技規則テストの結果をそれぞれ知らされた後、皆すぐに休憩に出てしまい誰も残っていません。「競技規則テストの復習(誤りが多かった問題)」は、テレビ観戦研修の後になりました。ここで私も競技規則テストの合格を知らされました。
ブンデスリーガのテレビ観戦研修は、後半が始まってもほとんど皆休憩から戻ってきていません …。
後半開始後 10分程でようやく皆戻ってきました。
17:20
意見が分かれるであろう判定の分析
ハーフタイム中の予定であった、「競技規則テストの復習(誤りが多かった問題)」がここでまず先に行われました。「一番間違いが多かった問題は…」から始まりましたが、どうやら各自の点数だけではなく、どの問題を何人が間違えたかを記録にとっているようです。
18:00
夕食
18:45
講義/ディスカッション2
アセスメントの評価システムの問題点、意見交換
2年連続同じテーマ、アセスメントの評価システム(Bewertungssystem)でした。
ここで言う評価システムとは、「アセスメント・レポート のフォーマット と評価項目」にて既にお伝えしたそれぞれの評価項目(例えば「2. 競技規則の適用、競技規則の解釈、ゲームコントロール、戦術的振る舞い」や「3. 懲戒罰、懲戒罰の数」)において、具体的にどのようなケースでアセスメントの評価点が加減算されるのか、加算(Aufwertung)されるケースと減点(Abwertung)されるケース、どのような場合に+0.1 、+0.2、-0.1 もしくは -0.2 となるのか(加減点の幅)についての評価基準です。
アセッサー向けのガイドライン(Leitlinien)を引用しながら講義、ディスカッションを行いました。
※アセスメントの評価システムについての詳細は別の記事にて書きたいと思います。
続いて
カフェテリアに集まり、ビールを飲みながらリラックスして意見交換
二日目(日曜日)
08:15 –
朝食
09:00 –
チェックアウト(鍵の返却)
09:30 –
講義/ディスカッション3
2019年
ドイツサッカー連盟、地域協会における 2019/2020年シーズンの競技規則の変更点の概要
2018年
Konformitätstest (映像を使ったテスト)でした。Konformität (conformity) の語感から、スタンダード映像を使った研修を思い浮かべて頂ければ分かりやすいかと思います。
判定のスタンダードを理解することに加え、以下の目的もあります(DFB発行の機関紙より原文の引用と私の和訳になります)。
「コンフォーミティ・テストは良い点を取ることが目的ではなく、審判員自身がどのような種類のシーンを見極めるのが弱いのかを知るためのテストです。一方で、結果は審判員を指導する側にとっても重要です。例えば、オフサイドのシチュエーションについての問題を多くの審判員が間違えたとしたら、次回の研修、トレーニングの準備へのインプットとすること(そのシチュエーションを次回の研修、トレーニングのテーマとするよう準備すること)ができます。」
„Dieser Konformitätstest ist eine Eigenüberprüfung. Es geht weniger darum, das beste Testresultat zu erzielen, als vielmehr darum zu schauen: Wo habe ich möglicherweise noch Schwächen, welche Art von Szenen bereiten mir noch Kopfzerbrechen? Aber auch für die Lehrgangsleitung ist so ein Test wichtig: Denn wenn beispielsweise die meisten Fehler bei AbseitsSituationen gemacht werden, können wir beim nächsten Stützpunkt darauf einen Schwerpunkt legen.“
10:15 –
講習のフィードバック、振り返りと終了の挨拶。
更新講習会は以上でした。
一泊二日の更新講習会の大まかな流れは毎年変わりません。来年以降は、毎年変わる「講義、ディスカッションのテーマ」についてのみ、記事を追加していこうと思います。