研修・講習会

児童・青少年保護のための行動規範と無犯罪証明書

ここドイツでは、コロナ禍下でも試合が継続して行われているのはブンデスリーガ1部から4部にあたるレギオナル・リーガまでで、地域協会管轄である5部以下のリーグは2020年11月より試合が行われておらず、そのまま今シーズンの打ち切りが決定されました。新しいシーズンは通常8月に始まりますが、その時点でコロナ禍の状況がどうなっているかは予測が難しく、5部以下のリーグは新シーズン当初から再開できるかどうかの見通しが立てられない状況にあります。

地域協会に所属する私にとっては、試合を担当できない状況が半年以上続いており、少なくとも今後3ヶ月も試合が行われません。年に一度4月から5月に行われる(筆記・体力テストを含む)審判免許更新講習会もキャンセルとなり、審判活動で審判仲間と接するのは月に一度オンラインで行われる研修会のみとなっております。

そのような状況下でも審判活動として多少の事務手続きを行う必要があり、先日、私が所属する地域協会より無犯罪証明書の提出を求められました。これは私だけではなく、地域協会に所属する審判員はすべて提出を求められています(一方で、市町村協会に所属する審判員は提出を求められていないようです)。

Von Richard Huber – Eigenes Werk, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=93270192

なぜ無犯罪証明書の提出が必要なのでしょうか。それは、児童・青少年保護のためです。

今回2021年に地域協会から受けた通知内容と、地域協会主催で行われた児童・青少年保護についてのビデオ・カンファレンスに参加しましたのでその内容もお伝えいたします。また、遡って、2018年に受けた地域協会からの通知内容と同意・署名した児童・青少年保護のための行動規範も併せてお伝えいたします。

2021年通知内容

地域協会は、児童・青少年保護について責任を持ち、地域協会定款にも児童・青少年保護について規則を定めています。その規則に従い、地域協会に所属し地域協会を代表して試合を担当する審判員は、最新の無犯罪証明書を提出してください。

2018年より地域協会に所属する全ての審判員は、児童・青少年保護のための行動規範に同意・署名し、無犯罪証明書については最新のものを定期的に提出し更新する義務があります。

これらの書類の提出、更新は児童・青少年保護に関する予防策として重要であり、地域協会と皆様の継続的な審判活動には欠かせないものです。提出、更新するかしないかについて交渉の余地はありません。期限までに提出、更新しなかった審判員は、残念ながら審判員名簿から除名されなければなりません。

無犯罪証明書は原本での提出が必要であり、守秘義務を遵守するために地域協会内での確認作業は担当者とその秘書の二人のみで行われ、それ以外の者とは無犯罪証明書の内容について一切共有されることはありません。確認が終わり次第、原本を郵送にてお返しいたします。

2021年児童・青少年保護に関するビデオ・カンファレンス

  • 性的虐待の定義
  • 実際に起きた事例、発生数に関する統計
  • なぜ児童・青少年に対する性的虐待はサッカーにおいて現実的な問題なのか
    • 犯罪者は、クラブ内で立場の弱い者(ここでは児童・青少年という意味)と接触する機会を窺っている
    • 青少年(選手や審判員)に対してコーチ、先輩審判員、アッセッサー、指導的立場にある者が及ぼし得る影響度と両者の力関係
    • 青少年(審判員)は審判団に副審として参加し、車での移動、更衣室など閉じられた空間を他の者と共有する可能性がある
    • 審判団として同じ試合を担当しない場合でも、前後の試合で青少年(審判員)と更衣室を共有する可能性がある
  • 児童・青少年保護のための行動規範に同意・署名し、無犯罪証明書の更新が必要な法的根拠
  • 地域協会定款の該当規則
    • 地域協会の業務に携わる者は、フルタイム正社員、ボランティアに関わらず3年毎に無犯罪証明書の最新版を提出し更新すること
    • 地域協会に所属し(育成担当、審判員として試合を担当するなど)児童・青少年に関わる可能性がある者も同様
  • 地域協会の児童・青少年保護に関する目標
  • クラブレベルで児童・青少年保護をどのように実施していくか
  • ケーススタディ
  • DFB(ドイツサッカー連盟)が推奨する児童・青少年保護のための行動規範

https://www.dfb.de/fair-playgewaltpraevention/kinderschutz/broschuere-kinderschutz-im-verein/

2018年通知内容

地域協会では、2011年よりすでに、児童・青少年と関わる地域協会スタッフへ無犯罪証明書の提出を求めておりますが、それを地域協会幹部、地域協会傘下の育成部門、審判員、審判員を指導するスタッフにも対象を拡大することに決定いたしました。

2012年に発効した児童・青年援助法 Kinder- und Jugendschutzgesetz (SGB VIII §72a) は、犯罪歴を有する者を児童・青少年と関わる仕事から排除するという内容を含んでいます。地域協会は、犯罪歴を有する者を児童・青少年と関わる仕事には採用しないという州スポーツ連盟の決定に対しても賛同いたします。

審判員は、選手の更衣室にアクセスする可能性があること、自身より若い青少年審判員の指導的立場となり得ること、フィールド上で権限を持ち得ることから、審判員が児童・青少年に対して及ぼす影響は深刻なものとなる可能性があります。よって地域協会は、各審判員が(児童・青少年保護のための行動規範に同意・署名すること、無犯罪証明書を提出することを含む)いくつかの具体的な行動とともに児童・青少年の保護についての意識を高めることを求めます。これらの具体的な行動とは単に法律を遵守するということだけではなく、児童・青少年に対する犯罪もしくは保護に関して存在していた(存在している)社会的なタブーを打ち破り、お互いの価値観、個人の境界線を尊重しつつ「見守り(と発見したら行動を起こす)文化」を創っていくということでもあります。地域協会に所属する審判員は、児童・青少年保護のために責任を持って行動し、模範的であることが求められています。

児童・青少年保護のための行動規範

青少年審判員は我々の未来です。特にスポーツの場面において、我々は児童・青少年を保護するという大きな責任を持っています。ゆえに、私は以下を約束します:

  1.  保護
    • 青少年審判員が持つ個人的な権利を尊重し、青少年審判員がスポーツとともに成長することを助けること
    • 青少年審判員の身体的及び精神的なインテグリティ(不可侵性)とプライバシーを尊重し、物理的、精神的、性的を問わず如何なる形の暴力も行使しないこと、また他者から強制されたとしても暴力を行使しないこと
    • 知り得た青少年審判員の個人情報を第三者に開示しないこと
  2. 認知
    • 青少年審判員の個人の境界線を尊重すること
    • 審判活動において必要な場合、法的に認められることを除き、身体的接触を行わないこと
    • どうしても避けられない場合を除き、青少年審判員と二人だけで車に乗らないこと、どうしても避けられない場合は、事前に青少年審判員の保護者から同意を得ること
    • 児童・青少年保護のための行動規範もしくはその精神が守られていない場面を発見した場合、介入し、必要であれば助けを呼ぶこと
  3. 予防
    • 青少年審判員に対して模範となること
    • 青少年審判員と一緒にシャワーを浴びないこと
    • 写真や動画を撮影する場合は、青少年審判員とその保護者から同意を得ること
    • 「4つの目」(1対1)での会話は避けること、必要であれば閉じられた空間ではない所で会話をすること
    • 少なくとも「6つの目」(3人)の原則が守られていない限りは、更衣室での身体的接触は避けること
    • 少なくとも他に1名第三者が存在し、かつ保護者の同意がない限りは、青少年審判員とともにプライベートな空間(例えば、アパートや庭など)に入らないこと

2018年の通知にある「見守り(と発見したら行動を起こす)文化」という言葉は、„Kultur des Hinsehens“ という原語を地域協会からの通知内容とビデオ・カンファレンスでの内容、社会でどのように使われているかを踏まえた上で私が意訳したものです。

以下のビデオは、児童・青少年に対してではありませんが、暴力を受け助けを求めている人を発見した場合にどのように介入するかという例です(約3分間の映像)。

私自身、児童・青少年保護のための予防策については整理ができました。しかしながら、万が一児童・青少年に対する暴力を発見した場合にどのように行動するかという点は、もう少し色々な場面を想定して考えるなど準備が必要だと思っています。

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